赤だけが紅葉じゃない!11月に見頃を迎える巨木イチョウとススキの絶景トリップ
赤色の紅葉とはまた違った、どこか優しく、包み込まれるような壮大さを味わえるのが「黄葉(こうよう)」とススキの魅力です。
今回は混雑を少し離れて心ゆくまで晩秋の情緒に浸りたい方に向けて、11月に息をのむ絶景を見せてくれる和歌山県の2大名所「福定(ふくさだ)の大銀杏」と「生石(おいし)高原」を巡る絶景トリップをご紹介します。
秋のグラデーションを楽しむ!11月に極まる「黄色・黄金」の絶景
秋が深まるにつれて木々が色づくメカニズムには、赤と黄色で明確な違いがあります。
モミジなどの「赤色」
気温が下がることで葉の中に「アントシアニン」という赤い色素が新たに作られることによって生まれます。
イチョウなどの「黄色」
もともと葉の中に存在していた緑色のクロロフィル(葉緑素)が寒さで分解され、隠れていた「カロテノイド」という黄色い色素が表に出てくることで現れます。
イチョウの色づきは、朝晩の冷え込みがぐっと強まる11月中旬から下旬にかけてピークを迎えます。寒暖差が激しくなるほど黄色の純度が増し、鮮やかなレモンイエローから深みのある山吹色へと変化していきます。
そして同時期に見逃せないのが高原地帯を埋め尽くすススキです。夏の瑞々しい緑色から、秋の初めには柔らかな白銀色へと変わり、11月の晩秋になると穂が開ききってフワフワとした綿毛のようになります。そこに斜めから差し込む晩秋の低い太陽の光が重なることで、あたり一面が眩いばかりの「黄金の絨毯」へと姿を変えます。
樹齢400年超「福定の大銀杏」の圧倒的スケール
和歌山県田辺市中辺路町(なかへちちょう)の山あいに位置する宝泉寺の境内に、訪れる者を圧倒する1本の巨木があります。それが天然記念物に指定されている「福定の大銀杏(ふくさだのおおいちょう)」です。国道311号線から山道へと車を進めると、遠くの山並みの中にぽっかりと浮かび上がる巨大な黄色の塊が見えてきます。周囲の杉やヒノキの深い緑色とのコントラストが鮮明で、近づく前からスケール感に胸が高鳴ります。

数十本に枝分かれする生命力
樹齢はおよそ400年余りであり、かつて宝泉寺の開山時に植えられたと伝えられており、高さは約22メートル、幹周りは5メートルを超えます。地上から約4メートルほどのところで幹が数十本にも枝分かれしており、遠くから眺めると四方八方へと力強く枝を広げています。その圧倒的な生命力は、巨木ファンならずとも息をのむ存在感です。
福定の大銀杏の例年の見頃は11月中旬から11月下旬頃です。この大銀杏の素晴らしいところは、訪れるタイミングによってまったく異なる2つの絶景に出会える点にあります。

最盛期|空一面の黄色いステンドグラス
枝という枝にびっしりと黄金色の葉が茂り、青空をバックにそびえ立つ姿はまさに圧巻です。木の真下に入って見上げると、空一面が黄色いステンドグラスのように輝き、降り注ぐ日差しまで黄色に染まって感じられます。

落葉期|境内を覆う「黄金の絨毯」
秋風が吹くたびにハラハラと黄色い葉が舞い散り、境内一面がふかふかの「黄金の絨毯」で覆われます。散り落ちたばかりの葉は瑞々しく、足元一面が鮮やかな黄色で埋め尽くされる景色は最盛期の見上げの迫力に勝るとも劣らない風情があります。
夕日に染まる銀波の草原「生石高原」のススキハイク
和歌山県紀美野町と有田川町にまたがる「生石高原(おいしこうげん)」は、関西屈指の規模を誇るススキの自生地です。標高870メートルの山頂一帯には、約13ヘクタールにも及ぶ広大な大草原が広がっています。
遮るもののない360度の大パノラマ
車を降りて一歩高原の遊歩道に足を踏み入れると、目の前を遮るもののない大パノラマが広がります。天気の良い日には遠く六甲山系や淡路島、四国山地まで見渡せる360度の大展望が広がります。春から夏にかけては緑豊かな避暑地として親しまれていますが、生石高原がその真価をもっとも発揮するのは、秋風が吹き抜ける10月中旬から11月中旬にかけてです。見渡す限りの丘陵をススキの穂が埋め尽くし、強めの秋風が吹き抜けるたび、一斉に波打つように揺れ動きます。その様はまさに「銀波(ぎんば)」と呼ぶにふさわしい雄大さです。

昼の「銀波」から夕暮れの「黄金海」へ劇的に変わる時間帯
生石高原のススキハイクで絶対に体験してほしいのが、日没の前後1時間に起きる光のドラマです。

昼下がりの清涼な輝き
高い位置にある太陽の光を浴びたススキは、白銀色にきらめきます。秋の澄み渡る深い青空と、銀色に波打つススキのコントラストが爽快で、高原を歩くだけで身体中の空気が入れ替わるような開放感に満ちています。

マジックアワーの黄金海
太陽が西の空、紀伊水道の向こうへと傾き始めると、景色のトーンが一変します。夕日が真横からススキの綿毛を透かすように照らし出し、銀色だった草原が一瞬にして燃えるような赤銅色から温かな黄金色へと染め上げられます。風に揺れるススキ野原全体が押し寄せる大海原のように見え、息を呑むほどの静けさと感動に包まれます。
高原内にある奇岩「火上げ岩(ひあげいわ)」付近からの眺めは絶好のフォトスポットです。岩の上に立ち、遥か下に広がる黄金の草原と夕日をフレームに収める構図は多くの旅人や写真愛好家を惹きつけてやみません(足場が高く切り立っているため、撮影時の足元には十分注意してください)。
火上げ岩の地図を見るススキハイクを楽しむための装備とマナー
生石高原は遊歩道が整備されており、本格的な登山装備がなくても気軽にハイキングが楽しめますが、標高が約870メートルある山岳地帯です。快適に過ごすためのポイントを押さえておきましょう。
防寒対策を万全に
11月の高原は平地よりも気温が5〜8度ほど低く、日没前後は風を遮るものがないため体感温度が一気に氷点下近くまで下がります。フリースや薄手のダウンジャケット、風を通さないウィンドブレーカー、手袋などの防寒着を必ず持参してください。
足元の選び方
木道や砂利道、起伏のある土の小道が続きます。ヒールやサンダルは避け、滑りにくいスニーカーやトレッキングシューズで歩きましょう。
アクセスと山道運転
山頂直下にあるレストハウス「山の家 おいし」付近に駐車場があります。阪和自動車道「海南東IC」または「有田IC」から車で約45分〜50分ですが、山頂へ向かう道路は一部道幅が狭く曲がりくねった箇所があります。特に夕景鑑賞後はあたりが真っ暗になるため、ヘッドライトを点灯し、脱輪や対向車に十分注意してゆっくり下山しましょう。
レストハウス「山の家 おいし」の地図を見る11月だからこそ味わえる、深まりゆく黄金の旅へ
紅葉の旅というと「真っ赤なもみじ」を探しがちですが、11月の冷涼な空気の中で出会うイチョウの力強い黄色と高原を波打つススキの柔らかな黄金色は、秋の深まりをより雄弁に教えてくれます。
何百年もの間、山里の歴史を見守り続けて天を覆う「福定の大銀杏」。そして、風と光の戯れによって銀から黄金へと表情を刻一刻と変えていく「生石高原」。どちらの景色も一過性の派手さではなく、秋という季節の豊かさと自然のダイナミズムを五感で実感させてくれる特別な場所です。
今度の週末は暖かい上着を車に積み込んで赤だけではない、心温まる黄金の絶景に会いにいく旅へ出かけてみませんか。

