2026年6月、年金制度の改定により受給額が増えるという明るいニュースが入ってきました。しかし同時に、多くのパート・アルバイトの方が意識している「106万円の壁」の撤廃が現実味を帯びています。
「働く時間を増やしたいけれど、手取りが減るのは困る」「壁を意識せず、自分らしく働くにはどうすればいい?」――そんな不安や疑問を抱えている方も多いはずです。これまでの常識が大きく変わろうとしている今、大切なのは制度の変化を正しく理解し、自分のライフスタイルに合った働き方を選び取ることです。この記事では、壁の撤廃に備えて今からできる具体的な対策と、後悔しない働き方のヒントを分かりやすく解説します。
公的年金の「増額改定」をおさらい
2026年6月15日は、多くの年金受給者にとって待ちに待った支給日となりました。今月からは、物価高などを反映して公的年金の金額が引き上げられた「増額改定」が適用されています。
公的年金の額は、現役世代の賃金の伸びや物価の変動に合わせて毎年調整されます。現役世代が納める保険料の総額や物価の動向を基に計算されるため、経済状況が良いときには年金額も増える仕組みになっています。今回の改定で具体的にいくら増えたのか、ぜひお手元に届いている「年金額改定通知書」を確認してみてください。
現在、パートやアルバイトで働く方の中には、「106万円の壁」を意識して就業時間を調整している方も多いはずです。しかし、2026年10月にはこの賃金要件(月収8.8万円以上)が撤廃される方向で進んでいます。
制度が撤廃されると、これまで重要視されていた「年収」よりも、「週に何時間働くか」という労働時間の条件がよりクローズアップされるようになります。今後、社会保険料の負担を抑えつつ扶養の範囲内で働きたいと考えるなら、これまで以上に「週の労働時間」を正確に把握し、職場と相談しながら自分の働き方を柔軟に見直す準備が必要です。
シニア世代の家計管理
ニュースで「年金増額」と聞いても、日々の食料品やエネルギー価格の高騰を前に、「正直、豊かになった実感はない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、今回の年金額改定には「マクロ経済スライド」という仕組みが深く関わっています。これは将来の現役世代の負担を考慮し、年金額の伸びを物価や賃金の上昇率よりもわずかに抑える調整機能のことです。
たとえ年金の額面が増えても、私たちの生活費を押し上げる「物価上昇率」がその伸びを上回っていれば、手元に残るお金の価値、つまり「購買力」は下がってしまいます。額面上の数字だけを見て安心するのではなく、今の物価環境では「実質的には目減りしている」という現実に目を向けることが、これからのシニア世代には求められています。
物価高を乗り切るためには、受け取る年金を増やす工夫と、支出を最適化する「守りの管理」の両面が重要です。
年金とは別に、一定の所得基準を満たせば受け取れる「年金生活者支援給付金」という制度があります。これは一度手続きをすれば継続的に支給されるものですが、申請をしないと受け取れません。自身の世帯が対象にならないか、改めて窓口や自治体の広報で確認してみましょう。
通信費、保険料、サブスクリプションなど、毎月自動的に引き落とされている項目を洗い出してみてください。なんとなく契約しているサービスを解約するだけで、毎月の家計には大きな余裕が生まれます。
年金だけで全てを賄おうとするのではなく、必要に応じて少しだけ長く働くことも有効です。社会保険料の負担を考慮しつつ、自分に合った無理のない範囲で収入を得ることは、インフレへの有力な対抗策となります。
「106万円の壁」撤廃に向けたロードマップ
特に注目されているのが、パートやアルバイトの働き方に大きな影響を与える「106万円の壁」の撤廃です。これまで多くの人が「手取りを減らさないために」と意識してきたこの壁がなくなることで、私たちの働き方はどう変わるのか、今後のロードマップを整理してみましょう。
従業員51人以上の企業で週20時間以上働き、賃金要件を満たすと社会保険への加入義務が発生
「週に何時間働くか」という労働時間の条件がより重視されるようになる
この改正の最大の狙いは、短時間労働者であっても厚生年金に加入することで、将来の年金受給額を増やし、より手厚い保障を受けられるようにすることにあります。これまで「扶養の範囲内で働きたい」と労働時間を抑制していた層も、今後は「壁」を気にせず、自分のライフスタイルに合わせて必要な時間だけ働くという選択がしやすくなります。
10月の完全撤廃に向けて、今から私たちができる準備は「自分の働き方の再定義」です。
まずは、現在の職場が社会保険の適用拡大対象であるかを確認しましょう。加入条件から賃金要件が外れるため、これまで対象外だった方も新しく加入対象となる可能性があります。
社会保険に加入すると、給与から保険料が天引きされるため、一時的に手取り額が減るように感じることがあります。しかし、それは「将来の厚生年金が増える」という未来への積み立てでもあります。目先の手取りと将来の年金額、健康保険の手厚い保障という「トータルでのメリット」を比較してみてください。
制度が変われば、職場のシフト体制も変化する可能性があります。「扶養から外れてでもしっかり働きたい」のか、「社会保険に加入した上で、今まで通りの時間で働きたい」のか、自分の希望を明確にして、雇用主と丁寧に対話しておくことが大切です。

