会社員必見!年末調整を乗り切る準備と改正税制への対応
「年末調整の時期が近づいてきたけれど、毎年の手続きが面倒」と感じていませんか。会社員の皆様にとって、年末調整は税金を正しく納め、過払い分を還付してもらうための大切な手続きです。
特に令和6年(2024年)分からは、定額減税という新たな制度が導入され、手続きや準備に戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。また、各種控除の申告を正しく行わなければ、手取り額が減ってしまう可能性もあります。
この記事では、年末調整をスムーズに乗り切るための準備事項と、改正された税制(定額減税など)への賢い対応策を紹介していきます。効率的な準備で、この時期の負担を軽減し、自身の税金に関するメリットを最大限に享受しましょう。
そもそも年末調整とは?
年末調整は会社員として働く方にとって、毎月の給与から源泉徴収されている所得税の過不足を精算する手続きです。1年間の給与総額が確定する年末に行われるため、この名で呼ばれています。
会社は従業員に毎月給与を支払う際、概算の所得税額を差し引いて(源泉徴収)国に納めています。毎月差し引かれる税額は、あくまで概算であり、扶養家族の状況や生命保険料、地震保険料の支払いなど、個人の事情が十分に反映されていません。
年末調整の役割
所得税は1月1日から12月31日までの1年間の所得に対して課税されます。そのため、年末に1年間の給与総額が確定した時点で、本来納めるべき税額を正確に計算し直す必要があります。
この正確な年間の税額と、毎月概算で徴収されてきた税額との差額を精算する手続きが年末調整です。
還付される場合
徴収された税金が多すぎた場合は、差額が還付金として戻ってきます。生命保険料控除や扶養控除などを申告することで、還付金が発生するケースが多くあります。
追加徴収される場合
徴収された税金が少なすぎた場合は、差額が追加で徴収されます。年の途中で扶養家族が減った場合などに発生することがあります。
この手続きを会社が従業員に代わって行うため、会社員の方は原則として確定申告をする必要がありません。
「提出書類」の準備と確認
会社員にとって、年末調整は税金の精算を行う重要な手続きです。特に近年は税制改正が続いており、必要な提出書類も変更されることがあります。スムーズに手続きを終え、払い過ぎた税金をしっかり還付してもらうために、書類の準備と確認を計画的に進めましょう。
基本の3種類の申告書
年末調整で最も基本となるのが、以下の3種類の申告書です。これらは会社から配布されますが、改正税制に対応し様式が変更されている可能性があるため、前年の書類の使い回しはせず、必ず最新の様式を使用してください。
年末調整の準備スケジュール
1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 扶養親族の状況を記入します
- 定額減税の対象者や扶養親族を把握するため、この申告書が重要になります
- 国外居住親族がいる場合、「送金関係書類」の提出範囲が電子決済手段まで追加されるなど、変更があるため確認が必要です
2. 給与所得者の保険料控除申告書
- 生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除(給与から天引きされていないもの)などを申告します
- 令和6年分からは、一部の「あなたとの続柄」欄が削除されるなど、様式が簡略化されています
3. 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
(兼 年末調整に係る定額減税のための申告書)
- 基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、所得金額調整控除を申告します
- 特に令和6年分は、定額減税の対象となるかの確認欄が追加されている可能性があります
添付書類の準備
控除証明書類(原本)
控除を受けるためには、申告書だけでなく、その内容を証明する原本の添付が必要です。保険会社や年金機構から送付される控除証明書は大切に保管しておきましょう。
住宅ローン控除(2年目以降の継続者)
- 住宅借入金等特別控除申告書:税務署から初年度の確定申告後に送付されたもので、残り年数分がまとめて入っています
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書:金融機関から送付されます
令和6年分は金融機関が税務署に直接残高を通知する「調書方式」に対応するケースが増えており、証明書の提出が不要になる場合があるため、会社の案内に従ってください。
最新の税制改正ポイント(主に翌年分の適用)
年末調整は会社員にとって重要な手続きですが、毎年の税制改正によって申告内容や計算方法が変わることがあります。
令和7年分(2025年分)から適用される改正
1. 基礎控除と給与所得控除の引き上げ
基礎控除の改正:
- 合計所得金額2,350万円以下の個人について、控除額が最大58万円(現行では48万円)へ10万円引き上げられます
- これにより、低所得者層の課税所得が減少し、税負担が軽減されます
給与所得控除の改正:
- 給与収入190万円以下の者の最低保障額が65万円(現行では55万円)へ10万円引き上げられます
- 給与収入190万円超の場合の控除額には変更なし
- 令和8年分以後の源泉徴収税額表もこれに対応して改正されます
2. 扶養親族等の所得要件の改正
基礎控除の引き上げに伴い、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除などの対象となる親族の合計所得金額の要件が10万円引き上げられます。
これにより、これまで控除対象外だった親族(例として、パートタイムで働く配偶者や子)が新たに対象となる可能性が高まります。
重要なポイント
これらの改正により、「年収の壁」が緩和され、扶養控除の適用範囲が拡大します。
年末調整時には、従業員に新たに対象となった親族の有無を確認し、必要に応じて「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を促す必要が出てくるために注意してください。
医療費控除・ふるさと納税の「年内枠」確認
医療費控除
医療費控除は、自分自身や生計を一にする家族のために支払った1年間の医療費の合計額が、一定額(原則として10万円、または総所得金額等の5%のいずれか少ない金額)を超える場合に、その超えた部分が所得から控除される制度です。
年内に確認すべきポイント
- 対象期間:控除の対象となるのは1月1日から12月31日までの支払い分です
- 見積もり:まだ年末まで日数がありますので、今年度の医療費の合計額を見積もってみましょう
- 計画的な受診:年間10万円が近づいている場合は、計画的な受診や医療費の支払いを行うことで、控除の適用を受けられる可能性が高まります
領収書の管理
控除を受けるためには、医療機関や薬局が発行した領収書が必要です。年末になって慌てないよう、今からまとめて整理しておきましょう。
ふるさと納税
ふるさと納税は実質2,000円の自己負担で、寄附額に応じて所得税や住民税から控除・還付が受けられる制度です。
年内に確認すべきポイント
- 対象期間:控除の対象となる寄附は1月1日から12月31日までに行われたものに限られます
- 上限額の確認:控除の上限額は個人の年収や家族構成によって異なりますので、ご自身の控除上限額を年内に再確認しましょう
- 年内に完了:上限に達していない場合は年内に寄附を完了させましょう
重要な注意点
医療費控除と併用する場合は、確定申告が必須となり、ワンストップ特例は適用されませんので注意が必要です。
まとめ
2025年の年末調整は、基礎控除や給与所得控除の引き上げ、特定親族特別控除の創設といった税制改正への対応が必須となります。
これらの改正により、特に低所得者層の税負担が軽減され、「年収の壁」も大きく変わります。還付金が発生するケースが増えることも予想されますので、改正内容を正しく理解し、新しい様式となる申告書を正確に記入することが、スムーズな年末調整を乗り切るための最重要ポイントです。
必要な情報を早めに確認し、万全の準備を整えましょう。年末調整を効率的に進めることで、税金面でのメリットを最大限に活用できます。
